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2022.09.10
心理療法

プロセスワークとは

プロセスワークは1970年代、ユング派の分析家であったアーノルド·ミンデルが、夢と身体症状が同じメッセージを持つことを発見したところから始まりました(Mindell, 1985)。ユング心理学では夢は無意識から意識へ向けてのメッセージだと考えますが、ミンデルは痛みや歯を食いしばるなどの身体感覚や意図しない動きを丁寧にたどっていくと、夢と同じメッセージが見つかることを見出したのです。そしてユング心理学を土台に、様々な心理療法や東洋思想、現代物理学を取り入れてプロセスワークを発展させました。

深い知性

プロセスワークには、私たちの中に深い知性とも呼ぶべき賢く、慈悲深く、とらわれのない部分があるという前提があり、難しい問題に直面していても解決策はその人の中にあると考えます。深い知性の視点からは問題や悩み、葛藤はその人の潜在力や新たな生き方と出会うチャンスでもあるのです。

ただ人生にはどう頑張っても、落ち込んだ気持ちが続いたり、夫婦仲がぎくしゃくしたり、仕事のストレスに圧倒されたりして、なすすべがないように感じるときがあります。また人に気を使いすぎるとか、完璧主義すぎるとか、甘いものを食べすぎるなど、やめるべきなのにどうしても手放せないこともあります。そうしたときプロセスワーカーはその人が自身の深い知性につながり、問題を解決したり、新しい視点を得ることを助けます。

プロセスワーク実践の例

あるクライエントは恋人との関係に悩まれていました。悩みを私に打ち明けた後、「私はどうしていいか分かりません」と言いながら窓の外を見上げました。この窓の外を見るというシグナルは「どうしていいか分からない」という言葉と一致しないので、私は好奇心と敬意を持って「今、窓の外の方を向かれましたが何かを見ていたのですか?」と聞きました。彼女は無意識にした行動を指摘されて少しびっくりされたようで、「分かりません」と答えました。それで私は「もう一度、外を見て自分の中にどんな気持ちが起こるか観察してもらえますか?」と尋ねました。彼女は半信半疑で外を見上げてみると、「あ!」と声を上げて、次のように呟きました。「この悩みから離れて鳥のように高いところに行ってみたいです。」そこで私は鳥になって空を飛んでいるところを想像してみるように励ますと、このときは躊躇なく空を飛ぶイメージの中に入っていきました。しばらくして私が鳥の視点から今の人間関係を見てみるように声をかけると、「この関係は終わっているからすぐに離れなさい、と自分に声をかけたくなります」と笑いながら言いました。恋人との関係をどうしたらいいかを知っているご自身と繋がることができたのです。

プロセスワークの特徴と効果

プロセスワーカーはそれぞれの人が深い知性につながって、自分の潜在力や新たな可能性を生きることをお手伝いします。その際に身体感覚、動き、イメージ、音など非言語的なもの、つまりまだ無意識の領域にあるものにも働きかけるので、カウンセリングの展開が早く深くなりやすいです。一方でクライエントのフィードバックに細やかな注意を向けながら進めていくので、安全な方法でもあります。プロセスワーカーはクライエントの知性を信じ、その人が答えを見つけることを助けるので、クライエントはエンパワーされて(力を与えられて)自分の深い知性を信じられるようになります。

引用文献

Mindell, A. (1985). Working with the dreaming body. New York, NY: Penguin Books.