マインドフルネスとは、開かれた態度で今起こっていることに注意を向け、自分の中に現れる考えや感情、身体感覚に気づき受け入れていくことです。またそうした態度や気づきを育む実践でもあります。仏教の瞑想法に由来するマインドフルネスはジョン·カバット-ジンという人によって西洋に紹介され、特にストレス緩和の方法として広く知られるようになりました(Kabat-Zinn, 2013)。

マインドフルネス瞑想法

マインドフルネス瞑想の方法はたくさんあります。例えば座って呼吸に注意を向けたり、頭のてっぺんから足先まで自分の体をゆっくりスキャンしながらそこにどんな身体感覚があるか気付いていったり、ゆっくり歩きながら体験することに注意を向けたりします。また普段の生活の中で自分の中に起こっていることに注意を向けたり、今の自分を受け入れていこうとする実践も含まれます。

花カウンセリング＆コンサルティングでのマインドフルネスの利用

カウンセリングの中で構造化したマインドフルネス瞑想の時間をとることもありますが、主にはクライエントの話を聞きながら、必要なときに内側で起こっていることに注意を向けるよう促したり、プロセスワークやEMDRの技法と合わせながら使っていきます。例えばカウンセリングのセッションの初めに自分の内側にマインドフルな意識を向けてもらったり、ネガティブな感情がおこったときにマインドフルネスを保ちながら観察してもらったりします。また安堵や喜び、誇りなどのポジティブな感情は心の糧となりますので、その感情にマインドフルな注意を向けてもらうこともあります。

カウンセリングの中でマインドフルになることで、次のような効用があります

気持ちが落ち着く

私たちが落ち込んだり、不安になったりすると、その気持ちに巻き込まれてそれ以外の体験は感じられなくなることがあります。そうするとネガティブな気持ちがさらに増幅されてしまいます。そんなとき自分の意識を内側にむけ深呼吸をすることで副交感神経が優位になって気持ちがリラックスします。さらにネガティブな気持ちにマインドフルに注意を向けることで、穏やかで批判的ではない観察者の目が生まれますので、ネガティブな感情や自己批判的な声から距離が取れるようになります。

セルフコンパッションが育つ

ネガティブな気持ちが強くなりすぎると、私たちはその苦しさから逃れようとアルコール、甘いもの、インターネット、仕事などに依存してしまうことがあります。依存は苦しさを感じないための応急処置ですが、残念ながら本来の問題は解決せずネガティブな気持ちはなくなりません。反対にネガティブな感情にも開かれた心を向けることで、その感情に巻き込まれないけれど、それがあることを認め共にいることができるようになり、自分へのコンパッション（慈悲の心）が育まれます（Neff & Germer, 2018）。

内側の様々な体験に気がつく

キャンベル (1991) は私たちは常に瞑想しているが、それは「お金はどこから来てどこへ行くのか？」というような意図しない瞑想だと述べています。お金に限らず私たちは日常の心配事に気を取られてしまいがちです。マインドフルネスになることで、こうした意図しない瞑想に気付き、その瞑想を続けるのか、それとも一旦手放してみるのかの選択ができるようになります。「一旦、手放す」というのはこうした意図しない瞑想はまた戻ってくるのが普通だからです。一時的に手放す選択をすると、その意図しない瞑想のせいで今まで意識できなかった体験に気付けるようになります。

それはもしかすると幸せの感覚かもしれませんし、創造的なことをしてみたいという欲求かもしれません。反対に抑えていた悲しみや怒り、また身体の凝りなどかもしれません。そうした体験と一緒にいることで、それがたとえネガティブな体験であっても、そのために次にどうしたらいいかというステップが見えてくるのです。

感情の幅が広がる

トラウマのようにあまりに強いストレスを受けたり、辛いことを繰り返し体験すると、感情は怖いものと記憶され無意識に感情を感じないようにしてしまうことがあります。そうすると体験できる感情の幅がとても狭くなって、気持ちは安定している代わりにあまり喜びも感じられない状態になります。マインドフルネスを育てていくことで、次第に感情は怖いものではないことを学び、幅広い感情を感じることができるようになります。その結果、人生をもっと生き生きとしたものと感じられるようになるでしょう。

引用文献：

Cambell, J. & Moyers, B. (1991). The power of myth. New York, NY: Anchor Books.

Kabat-Zinn, J. (2013). Full catastrophe living: Using the wisdom of your body and mind to face stress, pain, and illness (rev. ed.). New York, NY: Bantam Books

Neff, K. & Germer, C. (2018). The mindful self-compassion workbook: A proven way to accept yourself, build inner strength, and thrive. New York, NY: Guilford Press.